第21章 手招き
ダンテはいつの間にか気を失っていた。
夢を見たような気がするが内容が思い出せない。
ひどく暗いような、力が抜けていくような感じがする。絶え間なく何かが流れ出るような。
暖かい。背中と額が暖かい。
これは人間の体温だ。の暖かさだ。
根拠のない確信を得て、ダンテは薄くまぶたを開く。
途端、こぼれそうな程の星空が目に入った。
「…あ。起きた?」
星空に目を奪われていると、の声と、上から覗き込む顔。どうやら自分は彼女の膝の上で寝ているらしい。
額に添えられた手に自分の手を重ね、ぼんやりと黒く澄んだ瞳を見つめ。
身体を起こそうとして、動かない事に気付く。
疑問を感じるよりも早く記憶が蘇り、一応生きてるようでよかったと、自分で自分を皮肉ってみた。
───は俺のものとはいえ、ライバルを助けるなんてな…笑えるぜ。
額の手に触れて、手がじんとしびれてくる。
の身体熱くないか? 俺が冷たいのか。
「……」
「無理しないで」
声で抑えられ、口をつぐむ。ふと左に目を向けると、バージルが同じく地面に横たわってに髪を撫でられていた。
血をギリギリまで出したせいか、ただでさえ血色の悪い顔が更に青く見える。一瞬死んでいるのかと思った。
俺もあんななのかな。病人ぶってに甘えでもしてみるか?
その思考が働く時点でもう大丈夫だとわかる。
ダンテは深く息をついた。
「あいつは…」
「ライア? …まだ寝てる。顔色もダンテと同じくらい悪いよ。…一体、どうなったの?傷が全く見当たらなくて…」
「助けた」
悪魔の力で。助かったはず。
傷も塞がったし、あとは彼自身の体力の問題だ。あまり丈夫そうではないが。
不安になる自分に言い聞かせるように、再度。
「助けた」
呟く。