第20章 藍空
ふざけんな。
ふざけんなふざけんな!
強い怒りだった。
赤い炎が、青から白く変わるように。
周りを飲み込んでしまうかと思うくらいの。
背を向けていても痛いくらいにわかる。
バージルでさえ目を見張るような。
怒り。
背中の剣、リベリオンを抜く。
ライアの身体を乱暴に仰向けにさせる。
腹部に大きな穴がぽっかりとあいて、見るも無惨な即死を確認。
───させねぇぞ…
剣を構え、自分の手首を切った。
途端ぼたぼたと溢れる血。それを、ライアの青白い唇に押しつける。
確信はなかった。
ただ、バージルが前に興味深そうに言ってくれた事が、ふっと頭をよぎったから。
大量の血が流出し、くらりと目眩が走る。
力が抜けていき、次第に地面に座りこむ。
駄目だ。ここで自分までへこたれてはたまらない。
ぐっと歯をくいしばり、自分が死なないギリギリのラインまで、血を。
バージルもダンテの考えがわかったようで、を抱えて走り寄って来た。
をダンテと自分の間に挟んで後ろを向かせる。
「こちらを向くな」と言ってわずかにうなずくのを確認すると、素早く自分の手首を切り。
痛みに顔をしかめながら、血をライアに送り込む。
「…いけると思うか?」
意識が朦朧としてきて、それをまぎらわせるためにバージルに問うダンテ。
「さあな」
対する答えはつっけんどん。簡潔で手短。
しかしダンテはもう、そんな事は全く気にならなくなっていた。
目の前に集中する。
ライアの傷口が、塞がってきていた。