第19章 闇
さあ。もう、お仕舞いです。
もともと後悔だらけの人生。感慨に浸るなんて、いくら時間があっても足りません。
それに浸っても変わらない。
ならばもう、さっさと。いなくなるに越した事はない。
ライアは、すっと瞳を閉じた。
闇の力に喰われる方法。
簡単だ。諦めればいい。
それだけでいいのだ。
力を抜く。
今まで意地を張って維持していたものが切れ、目眩がするほどの後悔と絶望と不安と疲労と悲哀がライアを襲った。
思わず身体を縮こませる。
身体が震える。
怖い。
瞳から雫。
瞬いて、指でぬぐって不思議そうに眺めた。
自分にも、まだ涙を流せたのか。そう思い、苦笑する。
身体が冷えていく。
心臓が押し潰される。
総て統べて、奪っていく。
怖い。
なくなっていく。
何もかもが。
だが、まだここでは終われない。
ライアは身体に力を込めた。
闇に負ければ確かに自分は死ぬ。しかしそれでは力が暴走してしまうのだ。
術者が負け、力が勝った代償と報酬として、存在するために必要な器がいらなくなるという自由を得る。
それでは駄目だ。
死ぬ意味がない。
なくなるなら。迷惑をかけたくないなら、力も消滅させるべきだった。
ならばどうするのか。
「……さあ。早く」
命令。
力に。
ライアは、震える身体を抱き締めて掻き抱き、圧し殺されそうな声で。
決意を。
「私を殺しなさい」
殺せ。
私を。
そして滅びろ。
忌々しい力よ。