第19章 闇
港だ。
は確信して走る。
ライアはなるべく人がいない所に行くつもりなのだ。
彼の性格を思えば当たり前。道順にまで気を遣うなんて、本当にどこまで優しいのか。
もう、建物の隙間から海がちらほら見える。
もうすぐ。あと少し。
崩れそうな足を叱咤する。
ふと眼前に見える空を見たは、次の瞬間ハッとした。
闇が。
闇が、立ち上っていた。
漆黒のゆらめきが。
心臓が凍り付く。あれはライアだ。
まさか。
「………っ!」
まさか、もう。
は力を振り絞り、願いを込めて港に滑り込む。
死んじゃだめ。
死なないで。
死んだらもう、何も残らないのに。
指輪なんて、気休めなのに。
お願い。
どうか。
の場所から随分離れた場所を走っていたダンテは、通りを挟んだ向こう側から走って来るバージルの姿を見つけた。
彼もダンテに気づき、二人は目配せする。
交差点で同じ方向に曲がり、並んで走り出した。
「港だな」
「あぁ」
交わすのはそれだけで十分。
あとは向かうだけ。
嫌な予感が、気味悪くまとわりついて離れなかった。