第19章 闇
私は本当に駄目ですね。
こんなによくしてくれた貴女を、笑顔にさせてあげられない。
その上お礼と理由付けて指輪を渡してしまった。
お礼だなんて詭弁だ。
本当は忘れて欲しくないだけ。
迷惑をかけるだけの存在。
そんな私に笑顔を思い出させ、幸せにしてくれた貴女には、苦しい思いはさせたくなかった。
だからいつも、貴女の幸せを願っていた。
しかしそれは間違いで。
迷惑の元凶がいくら幸せを願っても、それは幸せにはなれない。
邪魔にしかならない。
それに貴女には、あの赤い男がいる。それで十分。
ならば。
ならば、迷惑の元凶は。
苦悩のおおもとは。
災厄の源は。
消える事で、貴女の幸せになる。
でも、私はずるいですから。忘れて欲しくなかったんです。
本当にずるい。
貴女は指輪を見る度、私を思い出すのでしょう。
貴女は優しいから、思い出す度私が死んだ事に苦しむのでしょう。
許してください。
他には何もいりませんから。
何もしませんから。
指輪だけは。
指輪だけは、常に。
側に。
様。
私はいつでもいつまでも
貴女の最高の幸せを願いましょう。
ありがとう。
愛しています。
永遠に。
ふわりと風に舞って。
ライアの身体が、闇に包まれた。
もう限界です。
呟いて、瞳を細める。
ああ。
何て綺麗な金色。
空は、夕焼けの金色に輝いていた。