第19章 闇
ふわふわと漂う泡が唐突に弾けたように。
すっとは目を開けた。
「───…?」
今、私は本当に寝てた? 思わずそう思ってしまうほどの目覚めの良さ。
身体をゆっくり起こす。そして、わずかにかぶりを振った。
違う。眠っていたんじゃない。
眠らされていた。
「ライア……っ」
左手の指輪が鈍く光り、は自分の手を握りしめた。
眠らされる前の光景が素早く駆け巡り、はキッと顔を上げる。
わだかまりが残るような、嫌な予感。じっとなんてしていられない。
ライアは出て行ってしまったのだ。
それが、何を意味するのか。
確信も確証もなかったけれど。
ライアの性格と、力と、過去と、経緯と、指輪と。
それを合わせて判断したこの考えは、あながち間違っていないだろうと思う。
は急いで着替えると、部屋を飛び出した。
熱は引いていた。
なりふり構っていられず身だしなみも整えないまま階段を降りていると、後ろから声が聞こえた。
「!? 何やってんだよ寝てろって!」
振り返ればライアの部屋から顔を覗かせるダンテの姿。
そして部屋の中に、あの黒い姿はない。
急に現実を突きつけられたような気分になって、は泣きたくなった。
しかし今はそんな時間もない。
リビングへと走りながら、バージルへも向けて叫ぶ。
「ライアが出て行ったの! 時間がないから、説明は後でする!」
騒がしさを聞きつけて、バージルがキッチンから出てきた。の姿を見て目を見開く。
鬼気迫る言動に、表情を固くし、歩み寄って来た。
「ライアは確かにいないようだが…出かけたんじゃないのか?」
「そう、出かけたんだけど…ああもう! とにかく行かなきゃ!」