第19章 闇
階段をいつもより静かに降りて洗面所に向かい、顔を乱暴に洗う。
適当に拭いてキッチンに入ると案の定バージルがいた。ライアはいないようだ。
「遅い」
「いつもだろ」
そうお約束の会話をして、ダンテは冷蔵庫を開ける。
トマトジュースの瓶をひとつ手に取り膝で閉めた。
「おい、ライアを連れ戻して来い。の部屋にいる」
「は?」
突然バージルに不機嫌そうに言われて、ダンテはフタを開けたまま固まった。
「…ライア?」
「ああ。の部屋で話しているはずだ。随分時間が経っている…そろそろやめさせろ」
「え…誰もいなかったぜ? 俺、降りて来る前にの部屋覗いたもん。、寝てた」
「何?」
今度はバージルが驚いて振り返る。
何言ってんの、という顔をしたダンテをしばし見つめた。
誰もいなかっただと? 話は終わったのか?
ドアが開いた気配はなかったが…。
しかし、ダンテが嘘を言っているようには思えなかった。
だいたいつく意味もわからない。
話していないなら別にそれでいいのだ。
に負担がかからなければ。
「……なら、いい」
バージルは顔を背け、再び朝食の準備に取り掛かった。
ダンテは「何なんだよ」とぶちぶち言いながら、トマトジュースの瓶を片手にリビングへ消えていく。
サラダを皿に盛る。もう完成だ。
ドアの向こうに消えるダンテの背中に、「朝食だ。ライアを呼んで来い」と告げると、ややあって、明らかにめんどくさそうなうなるような返事が聞こえた。