第19章 闇
ダンテは眠気を訴える目をこすると半身を起き上がらせた。
ひとつ大きくあくびをして髪を適当になでつけ、床に足をつく。
───あ…、大丈夫かな。
昨日の事が思い出され、立ち上がった。
全く、熱に気付かないなんてらしい。危なっかしい所も可愛いのだがはらはらして仕方ない。
下に降りる前に様子見てみるか、と思いながら部屋を出た。
ドアの前に立ち、ノックしてみる。
響くのはただ静寂。
物音ひとつしない。
───まさか、あの状態で下に行ったんじゃねーだろうな。
顔をしかめて階段の上から耳をすませてみるが、1階からはの声はしなかった。
水音がしているところを見ると、誰か起きているようだが。
バージルだろうな。多分一人か、ライアと一緒だろ。
気にくわねーが、あいつがと一緒にいてしゃべらないわけがねえ。
部屋の前に戻り、もう一度ノックしてみる。
が、やはり返事はない。
はいつも呼んだら明るく返事をしてくれる。それがなく静かな空気はちりちりと不安が胸を焦がして。
覗いてみる事にしたダンテはドアノブに手をかけた。
「…………」
そっと引く。
───お。寝てる…
ベッドの上での姿を捉え、ダンテはほっと息をついた。
ただ横たわっているだけでなく、本当に眠っているようだ。
規則正しく胸が上下している。
仰向けで眠る横顔の周りにはしなやかに黒髪がうねり、その姿はまるでどこぞの眠り姫かと思うほどで。
駆け寄って唇に目覚めの口付けでも落とそうかと思ったが、そのせいでが起きたら休ませている意味がない。
ぐっとこらえて、音を立てないようドアをゆっくり閉めた。
もちろん、ダンテは気付かなかった。
の頬が涙で濡れている事に。
左手の中指に、見た事もない指輪がはまっている事に。