第18章 3メートル
は驚く。ライアを見つめる。
何、今の。
それじゃあまるで。
これで。
ライアはためらいなく踵を返す。
「!! 待っ…!」
は慌てて声をかける。追いかけようとする。
駄目。行っちゃ駄目。
でも何で。身体が動かない。
「待って…ライア、待…!」
ライアは立ち止まらなかった。
歩いてドアに向かいながら、いつものように言った。
「新月が終わったら帰って来ます。二人には、申し訳ないですが上手く言っておいてください」
そんな事、いくらでもどうにかする。
どうにかするから、少しだけ待って。
お願い。
行かないで。
まだ、一番大切な事を聞いてない。
全く力の入らない身体。
ライアの近くにいたから?
拳を握り、叱咤して、必死に動かそうとする。
ライアはドアノブに手をかける。
の瞳にたまっていた涙が、最後にぽたりと落ちた。
「待って…ライア……!!」
───バタン。
無機質に、音が部屋に響く。
それはもうシンプルにあどけなく。
すると、まるでそれが合図だったかのようには意識が遠のくのを感じた。
何これ。
駄目。寝ちゃ駄目。
ライア…まだ聞きたい事聞いてない。
どうして…。
出て行く事なんて、私もダンテもバージルも望んでないのに。
強烈な眠気に、は耐えられなかった。
視界がぼやけてきて思わず目を閉じたと同時に、すとんと眠りに落ちた。
その部屋の外でライアは。
ひとことだけ何かを呟くと、何も持たずにリビングに降りて。
家を出た。
誰も気付かなかった。
自室で寝ぼけた目をこすりようやく起きたダンテも、あろう事かリビングで本を読んでいたバージルまでもが、ライアが出て行った事に気付かなかった。
終焉開始。