第18章 3メートル
は思わず口を覆った。
吐き気?
嗚咽だ。
雫が布団に染み込んでいく。
頭を殴られたような。
あまりにも、それは衝撃的だった。
「…これが私の魔力の源です。巨大で膨大で絶大で絶対で絶望的な力。魔力と引き換えに、身体に寄生させているようなものですね。生まれてすぐに儀式で憑けられます」
どうやって、とは言わなかった。
ライアは言いたくなかったし、も聞きたくなかった。
ぽたぽた。
雫が絶え間ない。
落ちては消えて、その上からまた重なる。
服をもとのように着ての方を向いたライアは、それに気づいて困った顔をした。
「すみません」
謝罪。
何に対して?
はわからなくて、ただ首を横に振った。
ライアがまともに見られない。泣き顔を見られたくないのかもしれない。
布団に顔をうずめる。
「この魔力はただあるだけではなく生きています。私達と同じように、元気になったり弱ったり」
飼っているペットの事を話すように、淡々と言うライア。
は拳を握った。
「これが元気になるのは新月の前後2、3日と私の体調が弱った時。今は前者の方ですね。ちょうど今夜が新月です。私の身体をのっとろうと暴れまわっている。
魔力と私…人間は、仲が良くありません。人間と悪魔が対立するように」
その例えは、劇的に間違っているようでいて圧倒的に正しかった。
今も苦しくて苦しくてそこの窓から飛び降りたい気分なんです、と。
呟いたのをは聞き逃さない。
「この魔力、元気になると厄介で。力が強すぎて、周りの人間の体調まで狂わせてしまうのです」
ため息。
「半魔の二人は逆に体調が良くなっているようでこれに気づいてませんが…貴女がそうして体調を崩しているのも全て私のせい。
長い間人間と関わらないでいたせいですっかり頭から抜けていて…申し訳ありません」
長い間人間と関わらないでいたせいで。
こんなに他の事を考えるのは初めてだったから。
こんなに他人と話すのは初めてだったから。
こんなに楽しかったのは初めてだったから。
こんなに嬉しかったのは。
謝罪。
少し離れて。