第18章 3メートル
バージルから逃れるように視線をはずしたは、側で立っているライアを見た。
「ライアもごめんね。驚かせちゃって」
彼は驚いたような顔で立っていた。
の声を聞くと、まるで心臓を鷲掴みにされたような苦しい顔。
それに、が驚く。
「どうしたの?」
「……いえ。 おどろき、ました…」
まただ。は思う。
また、あの感覚。
削り削られる違和感。
昨日より強くなってる。
ですらこんなにはっきりと感じているのに、バージルは気づいていないようだった。
半魔の彼ならばすぐに気づきそうなものなのだが。
はどうしたらいいかわからず、不安そうにライアを見る。
「ライア、大丈夫…?」
尋ねると、ライアは笑った。
からっぽに笑った。
「それはこちらのセリフです。様こそ、大丈夫なのですか?」
「私は…大丈夫だよ」
「そんな風には見えんがな」
不意に身体が持ち上がる。
バージルが姫抱っこをして、をベッドに運んでいた。
「わわっわ! ちょっバージル!」
「大人しくしろ。今日はこの部屋から出るな」
てきぱきとベッドに寝かせ、布団を引っ張ってかぶせる。
「何かあった時は呼べ。俺かライアか、さもなくばあの馬鹿が飛んで来る」
は布団から少しだけ顔を出して、拗ねるようにバージルを見つめた。
つまらない。今日は何もできないのだろうか。
その様子が可愛くて、バージルは思わず笑んだ。
「心配するな。の仕事はあの馬鹿にやらせておく。のかわりだとでも言えば喜んでやるだろう」