第17章 熱
ライアは多少熱っぽいの腕をやんわりとつかみ、彼女の部屋へ誘った。
優しいが抵抗を許さない気迫があり、は大人しく従う。
キッチンを出る時ちらりとバージルを見ると、彼は料理を続けていた。
その背中を見て思わず笑みがこぼれる。
優しさが温かく身に染みた。
するとその時。
キッチンを出て階段に差しかかった時。
びくりとライアの手が震え、から離れた。
突然の事では思わず立ち止まった。
前を歩くライアはわずかにうずくまり、離した手をぎゅっと握り、何かをこらえているように見える。
「ライア…? どうしたの?」
「……何でも…ないです」
ひと呼吸置いて、ライアが振り向く。
その様子はいつもと同じようでいて違うようにも見えた。
ただ、ほんの少しだけ呼吸が荒いような。
違和感を感じかけるような。
それは確信ではなくてあやふやな感覚に近いもの。
は戸惑い、その一瞬だけ感じた感覚が心に引っかかってライアを見つめた。
しかし彼は笑って。
「行きましょう」
一言。
部屋に着くとライアは入口で立ち止まり、ドアを開けた。
どうぞ、と視線で促され、は一歩だけ進む。心配そうにライアを振り返る。
心にピンとつかえたものの正体は一体。
視線が合うと彼は微笑んだ。
「………今日はゆっくり休んでくださいね」
話したがらない。
拒絶された以上聞くに聞けず、は名残惜しそうに部屋に入った。
ライアがおやすみなさいと小さく呟いたのがかろうじて耳に届き。
再度振り向いて目に入った彼の顔は、ゆっくりと閉まるドアに隠されていた。