第17章 熱
「様、風邪をひかれたのですか?」
見ると、ライアが階段を降りてキッチンの入り口に向かっているところだった。
話が聞こえたのか心配そうな顔をしている。
「ん… 大丈夫だよ」
寒気以外大して身体の異変を感じないので、安心させるように笑みながらライアに言う。
しかしライアはそれでも不安の色を解かず、に近寄るとバージルと同じように額に手を当てた。
すぐに眉根を寄せる。
「熱いですよ」
「そう?」
「あぁ。今日は大人しく休んでいろ。こじらせると大変だ」
そう言って、バージルはの切っていた野菜に手をかける。
に手伝わせまいとする無言の意思。
「えっでも…私手伝え…」
「」
力強く呼ぶ声に、思わず口をつぐんだ。
バージルの真剣な顔がこちらを向く。
向けられた瞳に身体が縛られるような感覚。有無を言わせない圧力。
「休んでいろ」
「……ハイ」
言い諭される。
はうつむいた。
風邪のままご飯を作るなんて、考えれば迷惑な話だ。
いつ風邪をうつすかわからないし、何よりお荷物なのだろう。
ここは大人しくバージルの言う事を聞くべきだ。
はそっとキッチンから身体を離した。
すると、頭にバージルの手が乗る。
「の風邪を悪化させたくないだけだ。俺のために、ゆっくり休んでくれ」
は顔を上げた。バージルの微笑みが目に入る。
考えている事がわかったのだろうか。
いても荷物になるだけだと気落ちしたのが。
しかしが口を開きかけた時ライアが彼女の腕を引き、そちらに気を取られてしまう。