第17章 熱
「…………」
目玉焼きを焼いていた火を止め、野菜を切るをしばし見つめ。
きょとんとするその額にそっと手の平を添える。
彼なりに驚かせないようにしたつもりだったが、は一瞬びくっと身を引いた。
しかし構わず手を押し当てて温度を計る。
しかしバージルの手は料理をしていた事で多少暖かく、の額が熱いのかよくわからなかった。
となると。
「こっちを向いてみろ」
肩をつかんで促し、の手を止めこちらに身体を向けさせる。
さらさらとした前髪を上に上げ、バージルはごつっと額をくっつけた。
「いっ……え…」
わずかな痛みに顔をしかめたが次に目を開けた時には、すぐ目の前にバージルの伏せた銀色の睫毛とアイスブルーの瞳。
とっさにに視線を下げるとそこは唇で。
───うわっ…
は思わず視線をそらしたが、バージルの端正な顔が視界いっぱいに広がっていてどこを見ればいいのか心底困る。
どうにもできず、ぎゅっと目を閉じた。
バージルはその様子に愛しさを感じつつも、顔をしかめていた。
触れ合う額が明らかに熱い。しかもは「寒い」と言っていた。
加えて、くしゃみとくれば…。
「…風邪をひいたな」
「えっ」
額をそっと離してやると、は自分でも手をあてた。
「…ひいてる?」
「あぁ。熱もある」
きょとんとする。その様子からして、やはり風邪をひいていた事に気付いていなかったようだ。
すると階段から声が聞こえた。