第16章 冷雨
駄目だった。
どこかが切れた。
男達が通り過ぎた途端、ダンテはの腕を引いて道の端に引っ張っていた。
壁に背中を預けたダンテはの向こう側に傘を傾け、人通りから自分達を隠す。
そして。
「…え……」
突然の事で驚いているの顔を空いた手で引き寄せて、その唇に、唇を。
「んっ…!?」
驚く。
さすがに長くはできなくて、不自然ではないくらい短いの口づけをした。
の唇に触れて僅かに音を立て離し、舌でなぞるだけ。
全然足りない。
ダンテは身体を離して傘を持ち上げると、まだ驚いているに言った。
「お前…かわいすぎ。俺もう殺されてぇよ」
「へっ!? わ…私何もしてな…」
ダンテはさっきよりも荒ぶる気持ちを圧して、の手を握った。
口を開けば何を言うかわからなくなっていた。
「あ…」
傘は身体の前に掲げる。
俺は濡れてもいい。
ただは濡らすなよ。