第16章 冷雨
ふと、傘を持つ手に目が止まった。
大きい手。
の拳がすっぽり覆われるくらい。
───…手、繋ぎたいな
そう思ったが、傘を持っているので繋げない。
腕を絡めてみようかと思ったが、恥ずかしくてできそうになかった。
いやでもせっかく二人でいるのだしここはひとつ。勇気を出して。
そっと、遠慮がちに腕に手を絡めてみる。
「……!」
ダンテが驚いてこちらを見た気配。
恥ずかしいから目は合わせない。
しかし、ダンテの腕をしっかりと捕まえて。
ダンテは仰天して傘を落としそうになっていた。
抱きついてしまったことに後悔していたのがいつの間にか雨への愚痴になっていて、傘持ってたんじゃ手も繋げねぇ畜生と思いながら歩いていたところにこれだ。
の手が腕に触れてきた。
この時ばかりは、ダンテは自分を誉めた。
とっさに抱き締めようと傘を持つ手が震えた。よく抑えた。
もし家だったらどうなっていたかわからない。
全く…どうしていつもいつも危ない所を突いて来るのだろうか。
衝動は抑えたものの、まだやばい。
が恥ずかしそうに顔を少し赤らめていて、可愛いったらない。
ああ、本当に殺されるかも俺。本望だけど。
───くそ!殺されてぇのに何だこの状況は!
周りをうじゃうじゃと歩く人々を睨みつける。
せめて大通りじゃなければよかったのに。
を抱き締めたい。抱き締めたくて仕方ない。
路地裏に連れ込んじまおうか。ああでも、そうしたら絶対に抱きしめる程度じゃ終わらない。
そう思った時、前から男が数人近づいて来た。
見るからにいかついあんちゃん。外見を崩し破壊し、ちまい悪さをする事でボス気取りになる腐れ者。
すれ違う瞬間、にぶつかりそうになって。
ダンテは触れさせたくなくて。
「っと」
ぶつかる直前瞬時に傘を持ち替えての肩を抱き、ぶつからないよう引き寄せた。
その時、が怯えたようにダンテにすがりついて。
きゅっとしがみついて。
「………!」