第16章 冷雨
話しながら、二人は並んで歩き出した。
傘はひとつしかない。はダンテがさす傘を見上げるとダンテと目を合わせ。
照れたように笑って、身を寄せた。
───…超かわいい…
ダンテはそれにぼうっとしての横顔を見つめる。
嬉しさを押し隠したような笑顔がたまらない。
傘をほっぽって抱き締めて口づけたい。
が、ここは大通りだし、何よりも傘をほっぽるとが濡れる。
ぐっとこらえてを見ていたダンテは、ふとの背中が濡れている事に気付いた。
次いで自分のコートを見下ろす。
水滴が拭かれたようにない。
───やべ
「悪ぃ…背中の服、濡らしちまったな」
「え そう? 大丈夫大丈夫。気にしないで」
を見つけてその小さな身体に早く触れたくて、自分の服が濡れている事なんて全く気にしていなかった。
せっかく濡れないようにと傘を持って迎えに来たのに台無しだ。
───あー…カッコ悪
自分にため息。
迎えに来た意味がなくなってしまう。
しかし、はそれでも嬉しそうに笑っていた。
迎えに来たのに服が濡れたなんて事は関係ない。
心配して、迎えに来てくれた事が何よりも嬉しかった。
はそっと、ダンテの横顔を見上げる。
濡れた髪がいつもより光って綺麗。
真っ直ぐに正面を見つめるアイスブルーの瞳の横を一筋、雨が流れた。
こんな綺麗な人の側にいられるなんて、未だに信じられない。
本当に私なんかがいていいのだろうか。
時々ダンテがあまりに綺麗で格好よくて、別の世界にいる人のように思える時があるくらいだ。
今もそう。
「…ん?」
視線に気付いたのか、ダンテがこちらに目を向けた。
は慌てて目を逸らす。
「何でもないっ」
───うう…見とれてたの、わかったかな…
ダンテはそれに、嬉しそうにおかしそうにふっと笑った。
バレバレだっつーの。どんだけ可愛いつもりなんだよお前。
そのうち殺されそうだと思いながら前を向く。
「………」
はそろそろとまたダンテを伺い見た。
嬉しそうな僅かな微笑み。
何か見てたのバレてるっぽいけど…いいか。
にも自然と笑みが浮かぶ。