第2章 悪魔の店
「…なるほどな。それだったら金なんざ持ってねぇんだろうな」
黙っていた二人だったが、不意にダンテが納得したような声を出した。
その声はが予想していたのとは違うもので、思わず顔を上げて二人を見る。
バージルは無表情で読めなかったが、ダンテは考え込むような顔をしていた。
「───信じて…くれるの……?」
呆然と、呟くように言う。
ダンテは、当然のようにうなずいた。
「こっちにだって魔界と人間界があるんだ。今更もうひとつ世界が増えたって、大した事ねーよ。
な? バージル」
話を振られ、それまで黙っていたバージルは伏せていた瞳を上げた。
ダンテと同じ顔のはずなのに、全く印象が違う、ひやりとした面立ちに思わず背筋を正す。
彼は背もたれに身体を預け、すらりと足を組み考えるように腕を組んだ。
嫌味のない仕草だ。
緊張するを見つめ、バージルは口を開いた。
「…と言ったか。こちらに魔界への入口があるように、お前の世界にもこちらへの入口があるのだろう。
そして何かの拍子に開いたそれに、がたまたま迷い込んだ。そう見ていいだろうな」
そっか…とはうなずく。
バージルの説明を頭の中で繰り返し、理解しようと考え込んだ。
何かの拍子に、って事は、あの道はいつもあるわけじゃなかったんだ。
運がよかったのか悪かったのか、それはわからないが。
運よく不幸に当たったような感じ。
簡単に信じるのは難しい、おとぎ話のような展開。
「……で、報酬の話に戻るけどよ」
ダンテが不意に話を戻す。
「…お前、ここで働く気はねぇか?」
「え……」
瞬くに、ダンテは慌てたように付け足した。
「働くっても悪魔退治なんかじゃないぜ? ただ家の掃除とか飯の支度とか、家事を頼みてぇのさ」
それを聞いたバージルがダンテの隣で頷く。
「いい考えだ。貴様の料理はピザしかない上、他のものを作らせるととてつもなく不味いからな」
「おめーのもな」