第2章 悪魔の店
ふざける二人を、は信じられない気持ちで見た。
まさか、本当に。
助けてくれただけでもとても有難い事なのに、さらにその上住まわせてくれるというのだろうか。
食事もあって屋根のある家に住めて。しかも1人でではなく、3人で。
あまりに都合が良すぎて、失礼だとは思いながらも疑ってしまう。
「いいの…?」
「あ? あぁ。だってお前、そのまま外出たってあてもねーんだろ?また悪魔と仲良くしてぇってんなら話は別だけどな」
とんでもない!
はぶんぶんと首を横に振る。
ダンテはそれを見てにっと笑った。
「じゃあ決まりだ。先の事はまだわかんねーけど、しばらくよろしくな」
優しい言葉に、涙があふれて来る。
バージルも最初見た時より表情が柔らかくなっていて、ダンテに同意しているのがわかった。
よかった。
本当によかった。
そこでようやくは、自分が思っているよりずっと不安だった事に気付いた。
知らない道に入り込んで、帰り道は見つからず、悪魔と出会って、助けられて。不安にならないはずがない。
浮かんだ涙を手でぬぐう。
泣きたくない。
これくらいで泣くような弱い奴だと思われたくない。
かわりには、精一杯の笑顔を見せた。
二人を心配させないように。
嬉しいと伝わるように。
「はい。よろしくお願いします!」
───うっ!
初めて見るの笑顔に、ダンテの鼓動が跳ねる。
ちくしょう…なんて笑顔を見せやがる。
泣くのを堪えてんのがまたかわいいじゃねぇか…っ!
何かに心臓をぎゅっと掴まれたような感覚。笑顔だけでこんな気持ちになるのは久しぶりだ。
ふと嫌な予感がしてそっと隣のバージルを見ると、彼もまた驚いたようにの笑顔を見つめ、そのまま視線が外れない。
「バージルさんも、よろしくお願いしますね!」
と言うに、上の空で
「あぁ…」
と答えている。
───ハマったな、こりゃ。二人して同じ女によ。
ダンテはふんと笑った。
バージルがこんなにも早く人間の女に惚れるとは意外だったが、まあいい。悪いが俺には関係ねえよ。
どうやら、のおかげでこれからの生活が楽しくなりそうだった。