第16章 冷雨
サァァァ…
「……ん…」
んあ。いつの間にか寝てたのか。
ていうか何の音だ。雨?
そういや天気予報で降るとか言ってたが…確か午後からだったような…。
ま 関係ねえけどな。
……………
……え………
待て。
───雨!?
次の瞬間、ダンテはがばっと跳ね起きた。
寝ていたのはそう長い間ではないようだ。時計の針があまり進んでいない。
辺りを見回すが、寝付いた時と同じ静かなまま。
少し寝たせいか、頭痛はほとんど収まっていた。
多少はっきりした頭で、彼女の姿を探す。
───…まだ帰ってきてねえな。
戻って来たような形跡はない。しかし横の傘立てを見れば彼女のお気に入りの傘。
という事は。
「………」
ダンテは考えもせず家を飛び出した。
雨が降っているのに帰って来ない彼女。なのに、家に傘はある。
がこの冷たい雨の中、一人雨宿りをする姿が目に浮かんでいた。
それか、ダンテのための薬が濡れないように大切に両腕で抱え、必死に走っているか。
「…あやべ」
出て少し走って、またダッシュで家に戻る。
傘を一本ひったくるように取った。忘れるところだった。
そして今度こそ、傘をさして走り出す。
待ってろ、すぐ行くからな!
だから転んで怪我とかすんじゃねぇぞ!
2階では。
「先を越されたな。いつもは目覚ましをかけても起きない癖に」
出かける気満々の二人が、肩を落としていた。