第16章 冷雨
───薬屋なら…そんな遠くはねえな。
頭の中で地図を描く。
ここから10分ほど歩いた所だ。
迎えに行こうかと思ったものの、さっきから頭痛がひどかった。
二日酔いかよ…せっかくとデートできるってのに。
バージルが洗う食器の音すら頭にガンガン響く。
気持ち悪くなって、ダンテはその場にしゃがみこんだ。
「…悪い、バージル…水」
バージルは何も言わずコップに水をくむと、ダンテに差し出した。
「馬鹿は大人しく寝ていろ。そろそろ帰って来る頃だ」
「んぁ…そうだな…」
コップの水をあおる。
冗談抜きで辛い。
バージルは空になったコップをダンテの手から奪うと再び水を入れ、テーブルに置いた。
「俺は部屋にいる。何かあったら呼べ」
「いてくれねーのかよ」
「酔っ払いの面倒は見たくない」
そう言ってすたすたと言ってしまう。
「冷てぇの…」
ダンテは椅子に座ると、テーブルに上半身を倒した。
テーブルがひんやりとして気持ちがいい。
何も音がしない。全く静かな奴らだぜ。
人生本当に楽しんでんのかよ。
八つ当たり気味に思い、ダンテは目を閉じた。
───ああでもたまには静かなのもいいもんだな…頭に響かなくて済む。
空気の音だけが優しく響く空間。
ダンテはやがて、ゆるゆると眠りについてしまった。