第15章 酒が見せる夢
「はっ……ぁ…バ…っ」
が苦しそうにあえぐ。
嫌だと言うように首をのけぞらせるが、後頭部を押さえるバージルの手でそれは叶わない。
苦しそうに呼吸をする。
それにすら、バージルにはぞくりとくる。
深く深く
舌をねじ込み、音を立て。
いつもはダンテのもの。それが今だけ、支配できる。
酔いの勢いに任せているとはいえ、刻みつけないとやっていけなかった。
たった一度しかないであろうこの機会。の身体に、自分を、思いっきり刻みつけなければ。
溺れる。
「ぁ……はぁ…っ」
何度目か顔の角度を変えた時突然、ぐいっとが離れた。
見ればライアがすごい形相で睨みつけている。
今まで夢中だったバージルはそれを見て、今頃自分のした事を思い返す余裕ができた。
しかし。
しかし、だから何だというのか。
「………」
バージルは口をぬぐい睨み返す。
いくら睨みつけられようとも構わない。
大変な事をしたと思う程度の自覚はあったが不思議と後悔はしていない。
ただ、このつかの間の幸せを途切らせたライアへの怒りがあるだけだ。
「何をしたかわかっているのか」
ライアが問う。
「わかっているが?」
挑発。
ライアはそれ以上何も言わなかった。言っても無駄だと思ったのか。
バージルを睨みつけながらゆっくりとに顔を近付ける。
頬に手を添える。艶めくの瞳を間近で見つめる。
まるで浄化するように、舌で唇をゆっくりとなぞり。
未だ呼吸の乱れるそれに。
───ちゅ…
愛しそうに、音を立てて口付ける。
一瞬だけ柔らかい表情をさせて。
緩慢とした動作は見せ付けるかのよう。挑発的な視線にバージルは眉をひそめた。
そしてふと気づくと。
の口からは、規則正しい息遣いが。
───まさか、この状態で寝たのか?
酔っているのなら、別段不思議な事ではないのだが。
それが今のこの状態だと拷問に近いものである事をは知っているのだろうか。
知らないだろうな、と二人は確信した。
二人に口付けられ、幸せと欲情を残し。
酔っていたとはいえ二人を十分に翻弄したは、役目を終えたとばかりに静かに眠っていた。