第15章 酒が見せる夢
ダンテに役割を取られてしまったはくるりと踵を返し、皿と飲み物を用意する事にした。
戸棚を開けて人数分のグラスを用意する。
テーブルに一旦置いて、飲み物を出そうと冷蔵庫を開けると。
バージルがそのグラスを運んでリビングに行き、キッチンの中にはライアとの二人になった。
ライアは小さな背中を見つめる。彼女の気持ちが説明つかないくらいに嬉しくて、何か言えないだろうかと唇を開く。
「本当に…ありがとうございます。私は幸せ者です」
は振り返ってライアの表情を見ると微笑んだ。
「今までの分も、これからたくさんお祝いしようね。今日は何でも言って」
「───…っ」
明るく彼女はそう言って。
戸惑う私に道を明るく照らしてくれて。
私にはそれが眩しくて眩しくて。
焦がれていたそのものが手の届く位置にあって。
ライアは、その小さな身体を思わず抱きしめていた。
本当に嬉しい。
本当に嬉しいのに、嬉しかった事がない彼にはそれをどう表現したらいいのかわからない。
だから。
ただ、抱きしめるしか。
はそれにびくりとしたが、やがて静かにライアに身体を預けた。
おずおずと緊張しながらも、ゆるりと服を掴んでくる。
その時になってライアは初めて、自分が意外にも不安になっていた事に気付いた。
それは拭いきれるものではなかったが。
軽くなったのは確かで。
ライアにとっての、幸せの時間。
やはりの事が好きだと思い直し。
甘い匂いに酔って。
しかし幸せはすぐに終わる。
「ダンテに見られたら殺されるぞ」
バージルが入り口を隠すように立っていた。
一応ダンテに見つからないようにしている様子だが、視線はライアを刺すように非難している。
これ以上こうしていれば斬られるのは必須。
ライアは身体を名残惜しそうにゆっくり離した。
「わかっている」
が好きなのはライアではなくあの男。
それは痛いくらいにわかっている。
本当はわかりたくないし認めたくないし見たくも聴きたくもないのだか。
を見ていれば、その事実は脳髄に痛いくらいに響く。