第15章 酒が見せる夢
全く、の優しさにはこちらがはっとさせられる。
忘れかけていた優しさが戻る。
当たり前の事なのに、いつもできない事。それに気付かされる。
ライアは、を抱き締めたい衝動を抑えて拳を握っていた。
何て事をしてくださるのですか、貴女は。
お祝いなんてされた事は一度もない。ただの自己満足だと思っていたけれど。
これほどに嬉しいものなのですか。
温かい。泣きたくなるような気持ち。
唇が震えて。
「ありがとう…、ございます…」
礼を言うのが精一杯だった。
はそんなライアににっこりと微笑む。
わかっているのだろうか。魔術師の境遇を。
そう思ってしまうほど、優しく包み込むような笑顔。
「今日はこれでお祝いしよう。飲み物も買って来たから」
ライアはそれに、嬉しそうにうなずいた。
ダンテはぶすっとした顔でその様子を見ていた。
笑顔の。笑顔のライア。
自分には向けられていない。
本当の笑顔は自分にだけ見せる、と優越感に浸ろうとしても、それは虚しく自分に還り。
───面白くねえ…
急に買い物に行くと言うからてっきり自分へのケーキだと思っていたが、とんだ間違いだった。
まさかライアの為だったなんて。
嫉妬と独占欲が広がる。
そしてそれを押し隠す。
「貸せよ。運んでやる」
「ありがとう」
ダンテはからケーキを受け取り、テーブルに運んだ。
美味しそうなそれを見て一気に空腹感を感じる。
まぁ何にしても、の手作りケーキが食べられるのは嬉しい事だ。
作った理由を無理矢理頭の隅に追い遣り、テーブルの中央にケーキを置く。