第15章 酒が見せる夢
風が涼しくなり、静寂に包まれているスラム。
その一角ににぎやかな建物がひとつ。
「お前さっきに触っただろ…触んじゃねえよ」
「馬鹿は放っておけ」
「全くだ」
のいないところで嫉妬にまみれた争いを繰り広げる3人。
ダンテにバージルとライアが嫉妬し、に近づき。
それにまたダンテが嫉妬して。
エンドレスの闘い。終わりが見えない。
ダンテはイラついていた。
そこへ。
「でっきた!!」
というの嬉しそうな声。
そういえばさっきから彼女は何か作っているようだった。
ダンテは2人に先を越されないよう、すかさずのもとへ向かう。
キッチンの外からでもわかるいい香り。中に入ると、更に甘い香りが広がった。
テーブルの上に置かれていたのは、丁寧にデコレーションされたケーキと、嬉しさに頬を上気させている。
たった今飾り終えたらしい。満足気な表情で生クリームの絞り袋を持っている。
「うまそうなケーキ…」
───と、うまそうなだ。
生クリームついてら…
にこにこしているの笑顔に釘付けになるダンテ。
機嫌がいいのだとすぐにわかる。
頭を撫でてやりたくなった。可愛すぎる。
の頬についた生クリームを取ってやろうと手を動かすと、先にの指がそれをすくった。
小さな唇が開き、ぺろっとなめる。
「………っ」
垣間見えたの舌に、ダンテの心臓は跳ねた。
不意打ちだ。
───あぁ……全部閉じ込めてぇ…
しかし、邪魔者が2人。
「何だそれは」
バージルがいつの間に入ってきたのかこちらに歩み寄り、ダンテを押し退けての横に立った。
ライアもさりげなくバージルと反対側のの横に立つ。
は絞り袋をまな板の上に置き、照れ臭そうに言った。
「お祝いです。ライアの!」
「……え………」
「げ」
バージルは目を見張り、ダンテは顔をしかめ。
皆一様に驚いていたが、一番驚いたのはライア自身だろう。
そんな彼らをきょとんと見る。
バージルは薄く微笑み、彼女の頭を撫でた。
───らしいな。