第14章 割れたティーカップ
ダンテだけではない。バージルだって怒っているのだ。
いくら必死だったとはいえ、あんな形でを傷つけたライアを。
「行くぞ」
ライアの微笑みは消え、バージル互いに睨み合う。
ダンテもそれに気付いたが放っておいた。先に家に入る。
そしてふっと視線を外したバージルも、の手を引いて家に入った。
───家に帰るの、ずいぶん久しぶりな気がする…。
家の中を見渡す。どこも変わっていないはずなのに、どこか変わったように感じる。
いろいろあったせいだろうか。
見慣れたものを見て気持ちがようやく落ち着き、息をつく。
「待ってて。今紅茶入れてきますから。それとも、もう寝ますか?」
今はもう真夜中だ。あと2、3時間もすれば夜が明ける時間。
「の紅茶飲んでから寝る」
ダンテはソファにどかっと座ると、背もたれによりかかった。
と目を合わせると彼女は嬉しそうに笑い、わかりましたと呟いてキッチンに消える。
キッチンの入り口をそのまま見つめながら、ダンテは眉をひそめた。
どうしては笑ってられんだ?
ライアにあんな事されて、傷付いてんのに……
よほど神経が図太いのか。そんなわけがない。
と目を合わせた時の表情が忘れられず焼き付いている。
恐怖に震え、精一杯逃れようとし、救いを求める目。
ダンテと目が合った時の表情。
助かった、という思いと見られてしまった、という思い。
情けなさ。不甲斐なさ。申し訳なさ。
混ざり込んだ表情。
自分ですらまだライアを許せないと言うのに、があのショックから立ち直っているはずがなかった。
なのには笑い、ライアを家に招き。
理由は知れている。
───不安にさせないために、無理矢理笑ってんのか。
ふ、と笑った。
駄目だな。全然笑えてないぜ。
俺が惚れた笑顔は、そんな空っぽなもんじゃない。
ダンテは立ち上がった。
物音のしないキッチンへ入る。