第14章 割れたティーカップ
家へは、来た時と同じようにライアが魔術で送ってくれた。
一呼吸でもう事務所の前。
本当に便利なもので、一瞬で景色が変わった事にダンテはもちろんバージルも驚いていた。
「大した力だな。見た事ないぜ」
「あぁ。……やはり、術者に負担はかかるようだがな」
そう言われてライアを見たは、慌てて駆け寄った。
明らかに顔色が悪い。
表情はいつもの冷たい顔だが、息も荒かった。
本人は我慢しているようだったが、が見ただけでもわかる。
考えてみれば、ダンテにあれだけ殴られた後なのだ。
痛い思いをさせてしまったと悔やむ。
「大丈夫? ライア…」
はライアの額に浮いた汗を手でぬぐった。それに、彼はゆっくりと微笑んで。
「大丈夫ですよ。少しすれば治ります」
「無理しないで。ね?」
「はい」
───チッ…
ダンテはに聞こえないよう舌打ちして、家の扉を蹴り開けた。
──覚悟はしちゃいたが、やっぱ目に見るとつれぇな……。
が他の男に優しくするところ。
しかもライアに。
優しくされて、支えられて、心配されて。
それを受けるライアの笑顔を見ると腹が立ってくる。
───は俺んだ。誰にも渡さねぇ。
醜い嫉妬心。
今すぐライアから引き剥がして自分の部屋に連れ込みたい気分だったが、そう出来ないのはの気持ちがあるから。
もしそうしてしまったら、彼女の気持ちを踏み潰すことになってしまう。
わかっていながら、止められない気持ち。
───胸クソ悪ぃ…
「家、早く入ろう。紅茶入れてあげる」
そう言って笑い、ライアより先に歩き出す。
ライアはその小さい背中を見つめ。愛しそうに微笑み。
怪我をすると危ない。そんなに急がなくてもいいと言おうとして、思わず手を伸ばす。
が。
「ん? なあにバージル」
先にに触れたのは、バージルの手。
「いや……」
そう言いながら、バージルは後ろをちらりと振り返ってライアを睨んだ。