第13章 約束
無理を言っているとはわかっていた。それがダンテとバージルにとって酷い事だという事も。
ただの同情心。陳腐な気持ち。ライアを救えもしないのに、無理な願い。
ただ、今は方法がなくてもいつか見つかるかもしれないから。
いつ何が起こるか、何がわかるかわからないから。
それに賭けたい。
「お願い……」
「………………」
ダンテの表情は冷たかった。目を合わせているのが辛いくらい。
しかし、これで目を逸らしたら負けだ。負けられない。
人の命は、こんな事で捨てるものではない。
は見つめ続ける。
「もういいのですよ、様」
不意にライアの声。
「私には運がなかった。魔術師も残すところ私一人。思い切って滅ぶのもいいかもしれない」
「…………」
そう、自分なんて滅びればいい。そうすればに迷惑をかける事もない。
残念です。
貴女が本当に本当に、好きだった。
はライアを振り向けない。言わせてはならない言葉を言わせてしまった。
せっかく止まった涙が、再び溢れだす。
死に直面した人を前に何もできないのか。
計り知れない思い。孤独にまとわりつく恐怖。
それを、家族もなくしてたった一人背負った彼に。
何もできないのか。
そう思った時。
「に手は出さないと、誓えるか?」
ダンテの低い声。ライアは驚いて顔を上げた。
も涙目のまま、ダンテを振り向く。
「…本気……か…?」
「最悪に嫌だけどな。が望んだ」
「…本気なのか」
ライアでさえわかる。無理な願いだと。
それを聞き分けるなんて、万に一つもあり得ないのに。
その二人の会話を聞いて、は顔を上げた。
「ダンテ……!!」
「これでいいんだろ? 」
「ありがとう! ごめんね…」
がばっとダンテに抱きつく。無理だと思っていたのに。
よかった。ライアは一人じゃない。
彼は優しい人だとわかっているから。大丈夫だと、は確信していた。