第13章 約束
が「まだ怒ってる?」と心配そうに見上げると、ダンテは笑った。
「もう怒ってねぇよ」
の額に唇を落とす。
はそれにくすぐったそうに笑い、ダンテに抱きついた。
小さくて柔らかい。愛しくて愛しくて、ダンテはを腕におさめ離さないというように抱き締めて。
「ごめんな。俺も大人気なかった。が、理由もなしにこんな事するはずねぇのに…」
「いいの。私もごめんなさい」
「いや…。それに考えてみりゃ俺も…」
「?」
気まずそうな沈黙。ためらう間。
ダンテはぼそりと続ける。
「俺も、依頼人の女とキスしたからな」
「ええっ!!」
驚いては身体を離した。
冗談でしょう? ダンテの目を見るが、視線は不自然に逸らされていて。
真実だと何よりも明らかに語っていて。
嫉妬が舞い上がり、を覆う。依頼に行かせた事を更に悔やむ。
口付けでさえこの気持ち。ならダンテは私とライアを見た時どんな気持ちだったのだろうと、考えても予想もつかなくて。
言い表せない心の闇に、は納得する。
ダンテの叫び。自分がした事。
とんでもない事をしてしまった。
ダンテは、途端に不安そうになったを見て笑った。
の頭をくしゃっと撫でる。
「心配すんな。俺はお前しか見えてないし、他を見るつもりもない。今ので消毒された。あとは───の首にあるやつだな」
「…え?」
は気付いていないらしい。首にひとつ、こんなに鮮やかな赤い跡があるというのに。
視界に入る度、驚くくらいの憎悪がふくれるというのに。
「待ってろ。跡、つけ直してやる」
の首筋に顔を埋め、跡がある場所を舌先でなめる。
「ひぁっ! な 何…」
ダンテはそこに口付け、強く吸う。紅く華を咲かせる。
ライアのものより鮮やかに、大きく。
跡をつけながら、越しにライアを睨む。
彼はもう見ているのにも耐えられないようで、目を閉じていた。