第13章 約束
ダンテは立ち上がらないライアを冷ややかな目で見ると、背中から銃を抜いた。
その表情は今までの燃えたぎるような怒りは見受けられず、ただ静かに強い思いが。
殺してやる。
殺してやる。
「………」
銃口をライアに向け、引金に指をかける。
死ぬか生きるか、乞うか投げるか。
それを選ばせるような間があって。
それでもライアは動かない。視線すらダンテからはずさない。
それどころか、自嘲するように笑った。
「殺したければ殺せ。どうせなくなる命だ。今なら死んでも構わない」
その裏に含まれる意味を感じ取った瞬間、ダンテは歯をギリッとくいしばった。
引金の指に力がこもる。
「やめて…お願い、やめてよ! ダンテ!」
が叫ぶが無意味。音など彼には聴こえない。
目の前の黒が憎くて憎くて。目障りで邪魔で。
を泣かせた事。怖がらせた事。騙しここまで連れて来た事。触れたこと。
全てに怒りを感じ。
ただ、鼓動の音が。身体中に響いて。
そして引金が。
「やめてぇぇっ!!」
銃声がこだまして響いた。
「………何でだよ」
ダンテは銃口を向けたまま震えた声で言った。
硝煙が揺らぐ。手がぶれる。
は、いつの間にかぎゅっと閉じていた目をそろそろと開いた。
ダンテが撃つ直前、はバージルの腕をもがきすり抜けてとっさに走り、ライアの前で両手を広げていた。
ダンテはそれを見た瞬間考えるよりも先に身体が動き、そのわずかな時間で軌道を逸らし。
ライアのすぐ横の壁…5センチと離れていない所に、鉛玉がめり込んでいた。
「何でだよ…!」
耐えきれない。堪えられない。
なぜ。を見つめる瞳が揺れる。
必死な顔をする彼女の目からは、涙が絶えない。
ゴツッ、と重たい音が響く。
ダンテの手から、抜けるように銃が落ちる。
が涙目でダンテを見上げると、ダンテの方が泣きそうな顔をしていた。
「何でそんな奴庇うんだよ! そいつはお前を…!」
叫び。悲痛。非通の想い。
ダンテは唇を震わせ、力が抜けたように膝をつく。
安心して、困惑して、疲労して。
震える両手で顔を覆い、うつむく。
「何で……」