第13章 約束
「貴女には申し訳ないが、一度は承諾した事。守って頂きたい。それにもう、私が…自分で自分を止められない」
ライアはに近寄った。
は嫌だと首を振るが、止まらない。
「ゃ…いや……ライア…」
布団をすがるように握り締めたまま、逃げようとして壁際に追いやられる。
ライアはそんな彼女を見つめながら自分の服のボタンをもう一つはずすと、に手をかけた。
耳に口を寄せる。
「大丈夫です。すぐ、済みますから」
ささやく。
吐息がかかり、は身体を震わせた。
怖い。怖い。
どうしたらいいの。どうすればいいの。
願えど思えど、ここにはライアとの二人しかいない。助けは来ない。呼べもしない。
ライアが次第に近づいてくる。の背中は壁にぶつかる。
涙目で身をすくませる彼女を覆うようにライアは壁に片手をつくと、身体をかがめてするりと頬に触れた。
怖がる。罪悪感。
しかしそれよりも魅力的なものが確かにあって、それがライアを誘っていた。
は必死にやめてと請う。その割には身体に力が入らなくて、抵抗ができなくて。
ライアの哀しみ混じりの表情を見ると、何も言えなくて。
───抵抗、できないよ…
ライアは今までずっとずっと、死とその恐怖に耐えてきた。
だからこそこの時は、自分が生き残る為の最大のチャンス。
自身、心のどこかで、この時くらいはライアの言う事を聞いてもいいのかもしれない、と思っていて。
いけないとわかっているのに。ダンテが悲しむとわかっているのに。
だから怖い。
ダンテより先にライアと体を交えるなんて、ダンテがどんなに悲しむか知れない。それは最悪の行為だと自分で知っている。
しかしだからといって、死んでしまうライアを見過ごすわけにもいかなかった。
死ぬとわかっているのに見捨てるなんて、できはしない。
優柔不断な自分。曖昧な態度。
それがを縛り、身動きを取れなくする。