第12章 闇の豪邸
音のした入口に駆けて行くダンテ。後ろからの女の声はもちろん無視。
剣を片手に持ち、神経を研ぎ澄ませ。
───!?
感じ慣れた気配に、ダンテは動揺した。
青く強い炎。自分と同じであり対である存在。
しかし彼がここにいるわけはない。今頃家でといるはず。
なのに。
「ダンテ!!」
「…バージル!?」
ああ、やはり。聞き慣れた声。
しかしその様子は初めて見るもので、ダンテに緊張が走った。
バージルが息を切らせ、髪も下ろしたままで、服に汚れまでつけているのだ。
いくら慌てていたとしてもここまでの事は滅多にない。
何があった、と言おうとして、ふと気がついた。
バージルがここにいるという事は。
───は?
バージルとはダンテが仕事の間は留守番。彼が自分で頼んだ。
二人きりにするのは癪だが、に何かあったら守るようにと
なのに。
なのにバージルだけが、息を切らせ。
ここにいるという事は。
───まさか……
いつも落ち着いているバージルが見たこともないくらい慌てて。
───まさか、に………!
「に何かあったのか──?」
───何もない。
何もないはずだ。そうだろ?
は無事だと言ってくれ…!
しかしバージルは苦い顔をして、くしゃくしゃになった紙を差し出した。
「面目ない…俺がいながら」
ダンテは紙をひったくり、焦る気持ちと共に目を走らせる。
読んで、千切れそうなくらいにぎゅっと紙を握り締めた。
破かなかったのが不思議なくらいだ。怒りで手が震える。
───あいつ……!!
蘇るのは黒髪に金色の瞳。苦い記憶。
バージルを殴りたい気分だったが、今はそれどころではない。ダンテは走り出した。
「向かった場所はわかるのか!?」
「おそらく。あいつは術を使ったのだろう。空気に妙な力が残っている。それを辿れば…」
「ダンテ!!」
不意に女の声がした。
ダンテは舌打ちする。
忘れてた。あいつがまだいたんだった。
「逃がさないわよ。報酬渡さな…」
「お前!!」
ダンテは女の言葉を遮る。
「もう二度とうちの看板をくぐるんじゃねぇ。もしくぐったら……地獄の門までくぐらせてやる」
そして見向きもせず、家を駆け出した。