第2章 再開
「春休み中に免許とっておいたんです。」
入学前からいざと言う時のため取ったのだと話す。その横で
「荒北も昔は原チャだったな」
と東堂が荒北に話をふれば
「うっせ」
と返す荒北。その様子に福富が
「まだ乗っているのか」
と訊ね
「福ちゃんまで・・・もう売っちまってねーよ」
とそのやり取りの間名はニコニコしながら皆のボトルを交換して
「先に行きまーす!」
とそのヘンテコバイクで去っていった。
「名が来てから部が明るくなったな」
「うむ、やはり女子がいると違うな!」
「けっ」
皆の名との話を聞くとイライラする。
何を話せば良いかも分からず、そもそも未だにお互い気づいているのかも分からない。
(けど、さっき固まってたな)
原チャの話になった時、一瞬名の表情がこわばり、すぐに笑顔になっていた。
(やっぱ覚えてんのか?)
そう思いながら前を走るヘンテコバイクの横を通りすぎ、それからあっという間に二か月が経ってしまった。
多少話すようにはなったもののお互い肝心なことは相変わらず、分からずじまいだ。
この時期の部活動は窓を開ければ夏に向かう生ぬるい風が入ってくる。
ただ去年と違うのはそれに混じり、蚊取り線香のにおいと、クラスの女子達の強烈な臭いとは違って名が帰ると微かに残る制汗スプレーのにおいが鼻をくすぐり、部内に女子がいることを匂わせる。
「女子が居る」
染々と新開がそう言えば、隣では東堂が
「いいものだ」
と染々。
この頃から部活後に残るのはレギュラー入りが決まった福富と東堂、それにあやかった未来のレギュラー面子と、その年のレギュラー面子、そしてその横や外では名達メカニック担当が作業を行っていた。
ある日のこと、長引いたミーティングと荒北の自主練習が終わるのがかぶり、荒北がペダルを回す横で先輩達が帰りの挨拶を交していく。