第1章 終演と再会
箱学2年の春。
俺は相変わらずローラーを回し続ける日々で、今は1年の部活見学シーズン。
この時期に部室の戸が開き、室内がざわつく時はだいたい女子が来た反応。
「マネージャー募集とあったので」
そしてお決まりの台詞。
メンテナンスは基本自分だし、メカニック部員もいるしでマネージャーは募集だがぶっちゃけ必要ない。色目を使ってくる女子達は部長のしかける試験でことごとく落とされていくし、そんな事なら募集なんてかけなきゃいいのにと思うが部長達からすると雑用としてほしい面もあるそうだ。
後ろでは先程来た女子に部長達が部の説明をして試験が始まる。
(は、当たるわけもねぇ)
と無関心にローラーを回しているとざわつく部員達。
どうやらそいつが試験に受かった様で、女で珍しいと、どんな奴かと思って横目で見れば
(なんであいつがいる。)
と、昔が蘇る。
部長と握手している様子から部員になったのだろう。
ともかくあいつが入ってくる。
俺をふったあの女が。
俺を嫌いだと言ったあいつが。
そして新入部員の挨拶日。
「苗名です。部長のご好意でメカニック担当になりました。」
部長命、メカニック担当。その挨拶で名をこき使おうと思っていた部員は居なくなり、しょーもない事を考えていた奴等が残念がる。
新入部員一覧の名前を何度見ても、皆の前で挨拶をするその姿もやはりどうしたものか、名でしかなかった。
(髪切ったんだな)
あの頃長かった髪は切られ、おとなしそうな印象はなくなり、むしろマネージャーと話していた時がやはり素だったのだと思える印象になった名。
「同じ中学ではないか」
出身校も言うおかげでそう話しかけてくる東堂を放って、次は二年の挨拶になる。
名前を言えばこちらに気づくのだろうか?
ふと過る期待。
二年の自己紹介中、皆の名前を覚えようと必死でメモを取る名はなかなか目線がメモから離れない。
「二年、荒北です。」
んな事よりこちらを向け。
向いて、
今の俺を見て、
今のお前はどう思うんだ?