第1章 終演と再会
「口が悪い人は嫌いなんです」
そうやって終わった俺の中2の夏。
1つ下に入ってきた女子マネの友達の、おとなしそうな髪の長い後輩ちゃん。
マネージャーと帰りの待ち合わせをしていたのだろう。その子はフェンス越しによくマネの帰りを待っていて、けれどもその間は平然とこちらの練習を見ているだけだった。なのにマネと一緒に居る時はクラスの女子達と同じ様に声をあげて笑い、その差がなんだか気になり、姿をよく気づくようになって、あぁこれは好きだと思って告白し始めに戻る。
嫌いと言われたらもう無理だと思わないか?
それでも尚彼女にしたいとも、自分を変えようとも思わない時点で俺も奴に対する気持ちはその程度と言うことだ。
それからは運悪く怪我をして野球部を退部。
荒れ果てた中学生活の末、進学した箱学で福チャンに会い、ロードバイクに会い、今の俺になった。
相変わらず、口は悪いままだ。
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中1の夏。
野球部のマネージャーをしていた友達を待つため、帰りは野球部の練習を見て帰るのが日課。野球部は皆口が悪く、偉ぶって、がさつそうで声の大きい彼らが少し苦手で中でもエースである荒北先輩は見た目からして悪そうで、怖い先輩だと後輩達の中では有名で特に苦手だった。
だから
「好きなんだけど」
と言われた時一瞬何を言われているか分からず
「すみません。口が悪い人は嫌いなんです!」
と、呼び出された時点で怖くて仕方なく、相手を思いやることすらできずにその言葉を投げつけた。
先輩はあっけにとられ、なんとも言えぬ表情でそうかとだけ言ってそれでおしまい。
気まずさから野球部を遠ざける様になり、久しぶりに行った時には荒北先輩は怪我で部を辞めていた。
それから先輩は荒れに荒れ、それは高校でもだと自分が中学三年になってからも風の噂で聞く程。
人に対して"嫌い"と投げつけたのがひっかかりながらも、先輩がどの高校に行ったかも知らずに、私は好きな自転車競技部がある箱学へ進学した。