第3章 慌ただしくなる日々
何年経とうとも。
治兄様の考えは全く読めません――
ふーふーしながらグラタンを頬張り、そんなことを思う薄雪。
そしてフッと思ったのだ。
最近になってから
時々とはいえ、食事に来るようになったな、と。
「治兄様」
「なに?」
モクモクと食べている太宰が薄雪を見る。
「あの……美味しい…ですか?」
「美味しいよ」
「!」
薄雪が驚いた顔をする。
「何だい?その反応」
「いや、治兄様が私の事を素直に褒めるなんて明日は天変地異が起きるのではと心配して」
「私のこと何だと思ってるの?」
「鬼…?いや、もっと禍々しい……うーん」
「よーく判ったよ薄雪。明日から覚悟しておき給え」
「冗談です、ご免なさい」
ふふっと笑って食事を再開する薄雪。
「そう云えば、いつ料理なんて始めたんだい?」
「えーっと……そうですね。今から半年程前でしょうか。事務所で女子力の話になりまして」
「へぇー」
「始めてみたら結構楽しいものですね。最初は簡単なものしか作れませんでしたがレパートリーも増えてきました」
「そう。じゃあ明日から毎日食べに来るから」
「はい。判りまし………え」
ご馳走様。
そう云うと食器を持って立ち上がる太宰。
そして、
「明日から毎日食べに来るから」
もう一度、同じことを云って去っていった―――。