第1章 最悪な1日
『武装探偵社』―――
軍や警察に頼れないような危険な依頼を専門にする探偵集団であり、
昼の世界と夜の世界
その間を取り仕切る薄暮の武装集団――。
そんな探偵社の役割は大きく分けて2つある。
1つは調査員―――。
「国木田。どうだった」
「矢張り黒でした。現場を押え、軍警に引き渡し済みです」
「怪我は無かッたかい?」
ビクッ!
国木田と呼ばれた男は、白衣を纏った女性にそう云われるや否や。
方を大きく弾ませた。………若干、顔色も青い。
「いやっ!無傷でした!」
「おや?そうかい。残念だねェ」
「……。」
そしてもう1つは事務員だ。
「白沢この書類も頼む」
「分かりました」
「白沢さん、此れの関係書類知らない?」
「それでしたら先刻、追加分と取り纏めて其方の机の上に置いてましたが」
「わー!もう纏めまで終わってるの!?助かったよ!」
慌ただしく業務を行っている事務員達だが、一人だけ淡々としている人物に注目する調査員、こと国木田と与謝野。そして、わが社の社長である福沢。
「若いのに関心だねェ。あんなに要領が良いなんて」
「身体が弱く、学校に行ってないとのことだったが全然、問題無いですね」
「うむ」
3人が注目しているのは前月入社してきた白沢薄雪と云う女性……と云うより色白の少女だった。
少し茶色がかった黒の、胸元ほどまである髪を緩く2つに分けて結んでいる。
齢は15。
本来ならば未だ学生なのだろうが病弱を理由に進学をせず、独学で勉強をしながら此処で働いているのだ。
そんな3人の視線に気付き、
「お疲れ様です」
と手を止めてやって来た。
「もう仕事は馴れたかい?」
「未だ未だ勉強不足で皆様に手を貸して頂いてやっとですが何とか」
苦笑を浮かべて答える。
そして、少々失礼しますと去っていき、戻ってきた時にはお茶を用意してきていた。
「お疲れでお戻りだったのに気付かずに済みませんでした」
「いや、俺達にそんなに気を遣わなくて結構だ」
「とか何とか云ッて、嬉しい癖に」
「ばッ!そんっ……!」
与謝野がニヤニヤしながら云うと国木田が慌て始めた。