第25章 そして卒業 #side櫻井先生
いつ頃からか
夢見てしまう事を諦めてた。
全てを結果から考えて
それが正しいか…常識から外れていないか
ルールに捕らわれ、大切な物を諦めてきた。
だけど…どうか許されるなら、
これだけは……
頭に浮かんだのは、あの景色だけ。
桜のトンネル
君が…もしもいてくれたら。
夢中で全速力で走り出す。
お願い。オレに一度だけ。
飛び込んだピンクの光景に…目頭が熱くなる。
乱れた呼吸を整える間さえ惜しくて…もどかしい。
長い黒髪が…桜の舞う中揺れていて、儚くて夢みたいで。
また、オレの心に焼き付く。
「君が、好きなんだ」
背中越しの告白
君の答え…聞かせて。
「私、桜が大好きなんです」
彼女がゆっくり、オレに振り返った。
「先生に出会えたのが、桜の下だったから」
やっと絡まった視線が、
優しくて愛しくて、泣きそうになる。
「オレも、ここで君と出会った時から…
明日…会ってくれますか」
「先生…」
笑って、首を横に振る。
「違うよ。
もう先生と生徒じゃない…」
照れくさくて、ワザと乱暴に、彼女の前髪に触れた。
…桜の花びらがついてくる。
君に一目で奪われたあの瞬間は…
桜の季節が訪れ
散りゆく度に…きっと、色褪せることなく
何度も、何度も
色濃くオレを満たしてくれる
きっと……
これからもずっと