第25章 そして卒業 #side櫻井先生
「何言って…」
「見てたら…わかります。先生が誰を見てるか」
今にも泣きそうに、
言葉を重ねる彼女に…少なからず、迷いが生じていて
もう閉じ込めた気持ちだったのに、それは容易く溢れ出した。
「あの、だからっ、私は」
「…ありがとう」
「最後まで、格好いい先生でいて下さいね」
涙を溢す彼女に、オレは何もしてやれないけど…
素直になって欲しいという、彼女の優しさに後押しされる。
頭を下げ、その場から走り出したけど……
容易く想像出来る現実と迷いが…自然と足を止めた。
裏庭を抜けた渡り廊下
急に肩を叩かれ驚いて、振り返る。
「松本先生…」
「どうしました?…あ!
女子生徒からまた逃げてたんですか」
「…いえ」
「保健室寄ります?
美味しいコーヒー入れますよ」
「オレ…は」
動けないまま、ギュッと握りしめた掌を見つめる。
「今日は卒業。こんな
簡単な告白はないですよ」
松本先生が、すべてを
分かりきったように話し出した。
「上手くいかなくても、明日は会わないで済む。
…上手くいけば、明日は会えるんですよ。堂々と」