第24章 そして卒業 side智
おそらく今は、こっちの方が人がいないはず。
視界に入った保健室に飛び込んだ。
やっぱり誰もいない。
ゆっくりドアを閉めて…やっと手を離すと
オレを睨んで、怒った顔して…
だけど、ごめん。
正直嫌がられても、逃がす気なんてないんだ。
「保健室なんて連れ込んで、何?したいの?」
挑発的な瞳…ホント可愛くねえ。
「……なぁ、セックスより、
感じさせてやろうか」
ベッドの側に立つ彼女に笑って見せる。
ジリジリと距離を縮めて、
戸惑いの表情を見せた彼女が、怖くなったのか視線を逸らした。
そんな彼女を思い切り抱きしめる。
気持ちが伝わるよう、ぎゅう~~っと。
「なっ、なによっ」
逃れようとする体を抱きしめて…絶対放してやんない。
そのまま、オデコに唇で触れた。
「なぁ…オレの心臓の音、聞こえる?」
「……」
「やっぱさ…オレ、お前好きだわ」
「智…」
「だから……その、別にヤんなくても、
こーしてるだけでも繋がってる気しない?気持ちよくない?」
「…智は…束縛とか嫉妬嫌いよね…あと、面倒くさいのも」
「え…」
「前に、付き合い始めた頃言ったのよ」
涙目の彼女が、
軽く睨んで言葉を重ねる。
「智を知れば知るほど好きになるから、
私なりのブレーキだったの」
「…なに、それ」
だから…軽いノリみたいに付き合ってたの?
「智に重い女だって…思われたくなかったから」
何だよそれ。……何か…さぁ、やっぱり話し合えば
すぐに分かり合えてたんじゃん。
「オレの事好き?」
胸に収めた体を抱きしめて、濡れた瞳を覗き込む。
小さく頷くから…
オレは…腕を緩めて…
少し屈むと、キスをした。
ほら…こうするだけでも、想いは、繋がらない?
ほんの少し、言葉が足りなかっただけ。
素直になれば良かっただけ。