第22章 先生と生徒 Side櫻井先生
君に出会えるのは、担当の英語の授業。
資料を探すためによく行く図書室。
委員長である彼女に用事がある時。
故意に共有する時間を作ったりしたけど、図書室や廊下で会える偶然に
年甲斐や立場もなく、ヨッシャーなんて心ん中で叫んでたオレを知ったら、幻滅されるかな。
……いや、されてんな…もう。
自分の勘違いした行動で、気づいた事がある。
君に出会えてた偶然は、偶然なんかでなかったと。
自惚れかも知れないけど、オレに会うために
彼女はどれだけの"偶然"を作ってくれていたんだろう。
授業中に、不意に視線がぶつかる事もなくなって
図書室にも
廊下にも
オレの視界から彼女は、いなくなってしまった。
資料室から見つけた君の後ろ姿
唯一自分から送る視線
銀色のフレームに
彼女以外の影が入り込む。
同じクラスの男子だな…
背後から肩を叩かれ、
振り返った彼女の明るい笑顔が見えた。
そのまま、並んで歩く
2人の影はフレームから見えなくなった。
これでいいじゃないか。
間違った感情に…
幸せな結末なんて期待してはいけないのだから。
彼女の為にも自分の為にも、
これで良かったのだと、資料を棚に整理しながら視界が悪くなるのに気づいた。
初めて知った。
遂げられない気持ちを持つ事がこんなに苦しいものだと。
彼女の存在が、どれだけ自分の中でかけがえないものだったのかと。
でも…いつか儚く消えてゆくのだろう。
君にひとめで奪われたあの瞬間は…
桜の季節が訪れ、
散りゆく度に…きっと、色褪せて…
なかったものにしてくれる