第15章 先輩と後輩 side ニノ
「ちょっと冷やしときゃ大丈夫!腫れも大したことないし…」
「はぁ~~~良かったぁ」
松本先生の声に、
相葉先輩は、オレの座った椅子の真後ろに立って、安心したように息を吐いた。
「先輩…あの、大丈夫ですから練習戻って下さい」
氷嚢を当てたオデコを押さえながら、後ろを振り返る。
「ダメだよ!
オレのせいで怪我させたのに!」
「いや…でも」
向かい合わせて言い合ってると…
『グゥゥゥ……』
大きなお腹の音が響いて、…お互い見つめ合う。
「ニノ?」
「……はぃ…」
そーいえば、昼飯食うの忘れてた。
こんなタイミングで腹鳴るなんて……かっこわりぃ
さすがに恥ずかしくなって俯くオレを、相葉先輩は笑うことなく、思い出したように保健室のドアを開けた。
「ニノ!
ちょっと待っててよね!ね?」
「えっ?はっ?」
引き止める間もなく、バタンとドアが閉まって。
同時に松本先生の笑い声が響いた。
「相葉先輩はどこ行ったんだろね?」
「……さぁ」
当てた氷嚢を頬にずらした。
相葉先輩が何しに行ったのかは謎だけど…
オレの為の何かだってのは明らかで、素直に嬉しくて体が熱くなった。
閉まったドアを見つめたまま、思わず頬が緩む。
「二宮くん、可愛いねぇ」
松本先生がからかうけど、そんなの今はどうだっていい。
ただ、当てた氷嚢の冷たさが心地良かった。