第14章 幼なじみの恋 #side 雅紀
……なのにさ。
「雅紀っ!」
大きな声と同時に、
後ろから勢いよく 巻き付いた腕。
「わっ」
背中に感じる重みと、の匂い。
「雅紀ぃ…櫻井センセ、受け取ってくれたの!」
泣いてんの…?
そんな、泣くくらい嬉しいの?
「櫻井センセ、こーゆうの受け取らないって噂だったから。
ホントは自信なかったの」
「ふ~ん…
そか…良かったな…」
何て言ったらいいんだよ。
「雅紀のおかげだよ!ね、これお礼」
「え…」
櫻井センセに渡した包みと似てる。
「何だよ、これ」
聞かなくても中身はわかってるけど。
「お昼まだでしょ?コレ、雅紀の分。おかず残ったから」
隣に座って、促されながら開けた弁当箱は。
「何だよ、これ」
バカにするみたいに笑って、箸で持ち上げた卵焼きは。
ちょっと焦げてるし、いかにも"端っこ"だ。
「残り物と失敗作だもん。センセに渡した分はキレイに出来たよ」
悪びれなくサラリと言うけど、結構見た目悪いよ。
「ど?美味しい?」
「お前さ、失敗作で、
なに褒められよーとしてんだよ。図々しいって…」
鼻で笑いながら、卵焼きを頬張った。
「美味しいでしょ?たくさん練習したもん」
「…まぁまぁかな」
「もぅ!」
何言っても、今は頭ん中、櫻井センセでいっぱいなんだろ
嫌味言っても通じない。
だから尚更、
作ったもんなら何でも嬉しいの、バレないよう必死なの。
悔しいから、 美味いなんて絶対言ってやんない。