第13章 先生と生徒 #side 櫻井先生
4時間目の終わりを知らせるチャイムが鳴り響いて…
教室を出ようと、
テキストを脇に抱えた途端、
「センセセンセ!
ちょっとちょっと!」
大きな声に呼び止められて、振り返った
「相葉くん?」
「ちょっと話があるんすけど!」
相葉くんの大きな声に、
クラス中の視線が注がれる
「あ…質問?授業で解らないことあったかな?」
「えー?違いますって、授業なんて、元々全然わかんないし!」
明るく笑って言うけど…
それは……
聞き捨てならないな
「あのね!ちょっと一緒に来て貰っていいっすか」
「え」
『なんだよ雅紀、
後輩の次は櫻井センセか?』
わぁっと盛り上がる教室
相葉くんが『まぁまぁ』って、みんなを宥めるような手振りを見せて…
オレに…ニコッと、
屈託ない笑顔を見せた
「だからっ、
ちょっといいっすか」
いきなり右手を掴まれて…教室を飛び出した
「えっ!ちょっと!」
冷やかすような声が遠退いていって… 連れて来られたのは…
「じゃ!ちょっと待ってて下さいね」
「は…?ちょっ?相葉くん!?」
グイグイ引っ張られ…
やってきた図書室
相葉くんが、本棚の影に合図して…
目の前に…人影が映って
視線の先には、
俯いた、女子…生徒
おずおずと差し出された包みは、明らかにお弁当で…
「櫻井先生っ!あのっこれ!よろしかったらお昼に…」
「イヤ…あの」
こういうのは受け取ってたら、キリがないから… 上手く断らなきゃって…
だけど…
その時、見えたんだ
本棚の陰
ハッとしてその一点を見つめた
長い髪のシルエットが…間違いなく、……彼女だって
最低だと思う
瞬間的に…笑顔になった
「ありがとう…お昼に頂くよ」
君の… 悲しい顔を
嫉妬する顔を
見たいと思った
鼓動が激しく鳴り出して、
受け取った包みを持つ手が…
罪悪感からか
それとも、
ただのバカな男心で、
…泣いた顔に満足したのか、
震えたよ