第1章 幼なじみの恋#side雅紀
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「雅紀!私ね。好きな人出来たの」
突然、部屋に押し掛けて来たと思ったら、予想通りの話
「あっそ~」
ベッドに寝転んで、漫画から視線を離さないまま、興味なさげに返事してやる。
「あ~!もぅ!ちゃんと聞いてよ」
そう言って、が漫画を奪い取るから、仕方なく…顔を上げた。
ベッドの下から覗いてさ…
…谷間、バッチリ見えてんだけど。
ラッキー、と思いつつ、 あんま見てたら気づかれそうだから胡坐をかいて向き合った。
「んで?今度は誰だよ。何年?何部?」
俺が尋ねると、ふふっと嬉しそうに笑って、
聞いてと言っといて急に勿体ぶる。
女の子って、まじメンドクサイ。
「誰だよ?言えよ」
「あのね…ふふ」
「なんだよ、その顔」
何、照れてんだよ?
「…櫻井センセ…」
「はぁ?…先生?」
コクンと頷いて、真っ直ぐにオレを見るけどさぁ。
「無理でしょ。先生って…
それも、櫻井すげー人気あんじゃん。
お前なんか相手にされるわけねーだろ」
そう言った途端、
さっき取り上げられた漫画が、顔に向かって飛んできた。
とっさに腕に当てて、攻撃を防御する。
「なんで止めんのよ!」
「そりゃ止めるよ。
オレは現実的に無理だって言ってんの」
「何でわかんのよ!」
今度は、ポカポカ拳で叩いてくるし!
「先生と生徒なんてドラマか漫画の世界かっての!」
睨み合って、の拳がやっと振り落とされる。
「雅紀なら!
……雅紀だったら、わかってくれると思ってた!」
「ちょ、、泣いてんの!?」
「もういい!雅紀のバカ!」
乱暴に開けられたドア
勝手に部屋に入って来て
勝手な事言って
勝手に泣いて出てった。
何なんだよアイツは!?
「泣きたいのはオレだっつうの…」
閉まったドアに、思わず漫画を投げつけた。
お前は、いつまでも昔と変わらないつもりなんだろうけど。
……オレは違う。
バカはどっちだよ。まじで。
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