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サクラ咲ケ

第8章 先生と生徒 #side櫻井先生








「先生、資料…
この棚でいいですか?」

「ああ、遅くまで手伝わせてごめんな」




授業で使ったテキストや資料を机に置いて彼女に笑うと、

にこりと微笑んで真っ直ぐにオレを見つめた。



クラス委員の彼女とは、こうして二人きりになる事も珍しくなくて……




「ありがとう。
ん?どうかした?」



彼女の自分に向ける視線に気付きながら、


平静を装って…棚の方に目を逸らす。


大人だしさ…
それなりに恋愛経験あるよ。


だから、向けられた視線に意味があるかないかなんて…ある程度はわかるつもり。


だから、
なんなのって……


自分自身に言い聞かせる。




その瞳を見つめ返して…



長い綺麗な髪に触れたい

そう思うことさえ、許されはしないのに。







一時の感情で、全てを棒に振るなんてどうかしてる。


なにより、君にはこれからたくさんの出会いがあって


きっと恋もするだろう。




たまたま出会った、年上の教師に、

ちょっと憧れを抱いてくれただけ。






だから…





「早く帰りなさい
暗くなるから…」


「……はい」




小さく音を立てたドアが、閉まるのを確認して…




数分後、資料室から窓の外を覗く。






背筋の伸びた
綺麗な後ろ姿が見えて。


何度目かな……





こうして、君が見えなくなるまで見送るのは。





どうか……この瞬間だけ赦して下さい。






君は生徒で、オレは教師




それ以上、それ以下にもならない。




なっちゃダメなんだよ……






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