第1章 過去の話
「ただいま」
控えめに帰ってきたことを伝えると、両親は酷く驚いた顔をして、その表情は次第に絶望へと変わっていった。
「なんで帰ってきたんだ」
乱暴に私の元へ近づき、怒りと驚きそして絶望が入り交じった声で父が言った。
それからのことはよく覚えていない
その後数年、私は今までと同じように両親とその家で暮らした。
変わったことと言えば、私の仕事が増えたこと、そして毎日暴力を振るわれるようになったこと。
家族に言われる「早く死ねばいいのに」の言葉には耳を塞いだ。
毎日傷だらけで野菜を売りにくる私を、街のみんなは心配してくれた。
いつものように野菜を売り、家に帰ると、扉の前に怖い顔をした両親が立っていた。
その異様な雰囲気を感じ取った私は近づくのをやめ、踵を返し走り出した。
手に持っていたお金とバスケットを放り出し、全速力で駆けた。
大人の走る速さに叶うはずもなく、父は私の小さな体に馬乗りになり、その大きな両手を私の首にかけた。
「死ね」
空気を欲し咳き込む私とその喉に手をかける父、それを見ている母。
ドォン……
刹那、父が私の目の前から姿を消した。
“姿を消した”のではなく、吹き飛ばされたようだった。
私を助けてくれたのは海軍だった。
素早く立ち上がり、後方の海軍の元へ助けを求めた。
海軍の1人のお兄さんに抱きつき、父に殺されそうになった現実をかき消すように泣き叫んだ。
傷だらけになりながらこちらに向かって叫ぶ母の声が聞こえた。
「アンタなんて生まなければよかった!!」
今まで散々言われてきた言葉だったが、なぜか今日の言葉はどれもこれもいつもと重みが違う。
母は私の目の前で首と体が分かれてしまった。