第5章 海の中の真実
顔が近づいた
目を開けると、鼻と鼻がふれあいそうなほどの距離だった。
床に後頭部をぶつけて歪めた顔を間近で見られた恥ずかしさ。やけに整った顔が私を見つめていた。文字通り目の前で。
遠くからシャチの声が聞こえると、盛大に舌打ちをして船長さんは部屋から出ていってしまった。
顔の火照りが治まらず、船長室で一人、頭上にハテナマークを浮かべていた。
床に座り込んだまま、船が大きく揺れているのもお構い無しに謎の焦りを感じていた。
しばらくすると私の心も船の揺れも落ち着いてきた。
少し部屋が寒くなった気がする。床にへたりとしたまま窓を見ると魚が泳いでいるのが見えたので、恐らく潜水して逃れたのだろう。
よかった…と一息ついて、一度部屋を出ようと重い足を立てた。
それから誰かがいるのでは、と食堂に向かった。