第1章 過去の話
幼い頃、自分がおかしいだなんて、塵ほども思っていなかった。
私も街の人達のように、将来はこの街で結婚してこの街で幸せになるのだと思ってた。
私はそんなにおかしな夢をみただろうか?
自分の家の反対側の海岸からやっとの思いで歩いて戻ってきた。
ふと家の中から両親がこれほどないまでに喜んでいる声が聞こえた。
ジャラジャラと何かが擦れてバサバサと何かが落ちる音がした。
玄関の扉に体をぴったりと引っつけて、耳を澄ました。
「ああ!今夜はパーティーだわ!昨日まではどうしてあんな子どもを産んでしまったんだろうと後悔してたけど、子どもを1人産んで政府に売るだけでこんなにお金がもらえるなら……」
これ以上は聞かないようにか無意識に後ずさりして、家の軒先でしばらく停止した思考を無理やり巡らせた。
「……?」
“政府に売った子ども”がもし自分のことではないとしても、両親が子どもを売ったことに変わりはなかった。
売った子どもとは、私の会ったことのない子だろうか。あるいは……
必死に思いめぐらす。
気が遠くなりそうだ。
次第に頭が痛くなってきたのでそろそろ家に入ろうと、扉に手をかけた。
ガチャ。