第4章 怖い人
さて、どうしよう。
夕食を終え、シャチもペンギンもいなくて、何をすればいいのかどこにいればいいのか分からない。
ベタベタの手をタオルで拭き取り、とりあえず甲板に足を向けた。
外に行けば暗闇に存在を隠すことができるだろう、と。
ゆっくりと扉を開けると船内とは対照に闇が広がっていた。
見上げればキラキラと輝く星と少し欠けた月が黒い海を照らしている。
外の風は若干涼しく、薄着だった私の体を震えさせた。
ツンと冷たい風が私の頬を撫でる。
後ろ手に扉を閉めたところで、横に二歩進んで壁にもたれかかった。
頭の中は“どうしよう”の言葉でいっぱいだ。
明日朝起きたらどんな顔をしてどこに行けばいいのだろう。
また図々しく朝食をもらいに食堂に向かえばいいのだろうか。そもそもどこで寝ればいいのだろうか。
船長さんにも何か言った方がいいだろう。黙認してくれているとはいえ、このままではまずい気がする。
親切にしてくれている二人と、足に包帯を巻いてくれたシロクマ、それから何かと気にかけてくれたクルー全員にもお礼を言わなければいけない。
ああどうしよう。
やらなければいけないことと した方がいいことが左右から私を引っ張っているように頭の整理が追いつかない。
それから、何をすればいいのか という問題も頭の中で浮上する。
壁に体を預けながらズルズルと膝を折ってしゃがみ込む。
手で顔を覆うと、忘れかけていた束縛が音を鳴らした。
まだ手首についたままの輪っかは冷たい外気ですっかりひんやりとして、私に冷たい金属の感覚を思い出させる。
膝を抱えて座り込んだ体制で、そのまま目を瞑ってこの現実から逃れるように目を閉じて思考のスイッチを切った。